このギターはヴィンテージでもなんでもなくて、1987年に製作された一点もののカスタムメイドのアーチトップ。ルシアーはドイツのブルクハウゼン在住のFRANK KROCKERという人で、
現在はサイレント・ギター(ヤマハとかアリアで有名な、あのホネホネギターね)を主体に作っていて、そちらはFRAME WORKSというブランドで独自展開している。HPはこちら。
Frame Worksは13pin MIDI対応ギターとして、ヨーロッパではなかなか評判がいいようだ。触ったことないけど。
さて本題ですが、明らかにいにしえのROGERのギターをコピーしたものなんですが、各所に現代手工ギターの様々なスキルとアイデアが
生かされている一本になってます。フィニッシュはクラシカルなシースルーのバイオリン・フィニッシュで、ピカピカに光ってます。ROGER特有のジャーマン・カーブは、FRANK KROCKERによって現代(つってももう15年くらい経ってるけど)
に蘇ってます。美しいです。ボディ部のバインディングはすべてメイプルと黒セル。まさしくバイオリンなんかの仕上げを想像させます。指板はエボニー、ネックとヘッドのバインディングは(写真にも写せなかったくらい)精密な7層。
そして、ピックアップはフロントにSHADOWのATTILA ZOLLERをフローティングでかましてます。相変わらず、いいPUです。更に、ブリッジは(これもSHADOW製かな?)ピエゾが仕込んであり、ピックガードのノブで双方ともレベル調整のうえ、ミックスできます。
パッシヴでの出力なのですが、FISHMANなんかのヘタレピエゾ(笑)に比べて、しっかりとした音を出します。ROGERとの一番の違いは箱の中に「根柱」が立っていることです。まあピエゾの兼ね合いもあるんでしょう。正解です。美しい音を鳴らしてくれます。フィンガー・スタイルの人には是非オススメの仕様です。
勿論ピックガード(ローズ)、テイルピース(ローズ)、ノブ(エボニー)も手製。スプルース・トップ、メイプル・バック&サイド、ネックは多分マホガニー。ポジションマークの丸印は、アワビ(笑)。
ROGERの時代(1950〜60)は、ネックは「厚くて、幅狭」なものが多いけど、これはフィンガースタイルにも十分楽勝の、薄くて幅広な仕様。ナット幅で45mmあります。爪弾くタイプの人は柔らかいゲージを好む人が多いでしょうけど、
ピエゾはテンションゆるいと辛いですよね。でもこのギターは010〜のセットを張ってもちゃんとピエゾはリリカルに音を拾ってくれます。下手さ加減もバッチリ拾ってくれます。
で、このギターはドイツのプロのジャズ・ギタリストに売ってもらったものなのだが、彼がオーダーした際には7000ドイツマルク(50万円!くらい)かかったそうだ。ホォー。実はちょいと泣ける話があって、彼は1年前に交通事故で
左手の指を数本失ってしまって、それを機会にギターをやめてしまって、それでギターを全部売っ払ってしまったそうだ。そのうちの1本がこれ、というわけ。もったいねー、でも「それがオレの生き方だ!」とおっしゃってました。
それもアリですな。ギターと一緒に彼のCDも送ってもらった。俺もガンバンなきゃ…… ヘヘヘ。ちなみにハードケースにはHERB ELLISのサインが入ってます。彼のアイドルだったそうです。
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