Jazzgitarren - vintage German made archtop guitars



 さて、改造編です。問題は、ギター本体の強度の強化です。ネックは通常の6本の弦に加え、3本の副弦の張力がかかりますが、このギターはその強度に 耐えうる頑丈さがなかったわけですね。そこで、話し合いの上、こういう工程で作業を進行することにしました。前述しましたが、完成まで半年近くはかかるでしょう。 順次進行状況をアップしていきたいと考えています。完成後はどんな音が出るのやら。楽しみですね。

1. バックを剥がす
2. トップ板の変型を修正
3. 割れの接着と補修

4. トップの補強
5. ボディーの補強
6. 共鳴部補強
7. パーツの補修と組み上げ
8. 調整





1 ■ 御開帳/バックを剥がす

 作業に取りかかって頂きました。遂にこの日が来た、というか(笑)。実は中を覗けば、不明なことだらけのこのギターのことが少しは判明すると筆者もリペアマンも考えていたのでワクワクドキドキ。で、中を開けてみてドビックリ(笑)。

 バックはほんとは共鳴部を含め1枚板なんですが、都合よく(?)リペア痕のある箇所(黒いニカワの部分)で分離できることが分かったので、本体の裏側だけをパカッと開けることが可能でした。バックの材質はマホガニー。薄いです。

 なんとこのギターは内部にまでゴチャゴチャと装飾がされていました。笑えばいいのか、驚けばいいのか、呆れればいいのか(笑)。サウンドホールの下には、女性のアンティークな裸婦画(写真左)が貼られてます。まあ、このくらいはホールから見えていたので、いいんですが。その他にも後光が差すかのような紋様や、宗教色のある絵がいたるところにあります。ルシアーのサインらしきものはどこにもありません。

 ネック接合部のあたりにはキリストを抱くマリア様、共鳴部との境目あたりには(ロッキーホラーショウを彷佛とさせる)ケバイおネエサンの絵、さらに(ポロっと剥がれてしまったようですが)の写真(・・・意味不明。以上写真右下参照)まであります。バック板が全体に黒光りでベタベタしてそうなのは、前回の修繕の際(何年前なんでしょうか?それさえ想像つきませんねえ)にニカワを全体的にベタ〜ッと塗ってしまったせいですね。トップの「口」の部分の装飾も、ニカワでベタ〜と張り付けてありました。



目の下に目の絵が描いてあるので、もしかしたら口の下も歯等の絵があるかも。
トップに付けてある目と口、及びその中(歯も含めて)は、後付けです。
目から覗き込んだらその中に瞳が有るという感じ。
おねぇちゃんは合計3人、マリア様まで居ました。あと犬が一匹。
おやじの絵(写真?)は、同じのが2枚。
ブリッジの下に向かってなぞの鉄板がのびてます。弦を止めてたのかな?
作った人の情報が有るかと思いましたが見当たりません。ヌードの下ですかねぇ。
消毒ついでにアルコールで拭きましたが、カビ臭いです。


 以上、リペアマンからのメールの抜粋(原文ママ)です。リペアマンの推測なんですが、このギターは展示用かサンプルとして、ルシアーがカスタムで作ったんじゃないか、ということです。今でもギターショウやらで腕を見せるために、やたら華美なギターを展示用サンプルとして置いてあったりしますよね。あれの類いではなかろうか、と。ただし数十年前の話ではありますが。



 さて、構造なんですが、ここでも驚くべき点がありました。それはブレイシング(力木=補強とアコースティック楽器の空気振動を司る重要な構造)なんですが、現在のギター製作技術においてはブレイシングはトップやバックに接着するのが基本だと思いますが、このギターはホゾを組んで、まるで木造建築物のように文字どおり「柱枠」が組んでありました。まあ、組立時に勿論バックと接着はしてあるんですが。それゆえに、バックを剥がしてもブレイシングは本体に残って浮いているわけですね(上の写真参照)。

 リペアマンによれば、太古のギター制作技術にはこういったホゾを組んだブレイシング構造のギターはあった、ということです。へ〜。で、筆者の推測なんですが、その当時の技術をわざと再現した、とか、もしくは当時のギターをバラした素人(?)が真似てギターを作ってみた、とか、色々邪推をしてしまいます。。



 御開帳で更にわかったこともあります。それは、開けたら少しTOPのゆがみが戻った、ということです。まあ箱形状の物体の一面をとったのですから張力から半分くらいは解放されるってのは自然の理なので、当然といえば当然なんですが、全体強度の補正によって、音が出せるレベルまで戻る、って確認できたようで、嬉しくはあります。

 TOPの修正と共に、この貧弱なブレイシングを改造補強、さらに通常の6コースの弦のテンション+3本の弦の強烈なテンションに耐えうるために、「鉄の支柱」をボディ内部に通そうか、というアイデアがでてきました。筆者はそんなアイデアを初めて聞いたので、ビックリ&感心したのですが、実はそのアイデアは、既に100年前のハープギターの世界では使われていた技術なんだそうです。後に、海外のサイトで実際にそうした鉄のトラスロッド状のパイプがボディ内部を通ってるという、ハープギターを写真で確認することもできました(写真下。多分東ドイツ製と思われるもの。ホールの中にパイプが覗いてますね)。





2 ■ トップ板の変型を修正

 さあ、最大の懸念であった、TOP板の補正。頻繁に蒸気を板に吹きかけながら、写真のようにクランプで割れている部分を中心に、板がまっすぐに戻るように力を加えます。もう既に木が古いので、相当な手間と時間をかけないとダメだと思われます。勿論、モノには限度ってのがあるので、「これ以上は無理だろうなあ」というレベルまで、とにかく根気強くやるわけです。一月以上は、これが続くと思われます。通常のサウンドホールのフラットトップなら、こういうのは専用の工具もあり、またバックを剥がさなくてもできる作業なんでしょうが、いかんせんこのギターは変型(にもホドがある、つーか。笑)ホールなので、こういうお姿での手術と、相成りました。現在既に完全には真直ぐとは言わないまでも、かなり平らになっているようです。やはり、そういうのを聞くと、安心しますね(笑)。



 さて、この作業を行う際に、当然のように、TOP板にあった装飾を、可能な限り外しました。そこで分かったことですが、(小さい写真のほうが外す以前。大きいのが外した後)この装飾自体がセルロイドを使用しており、ギター本体が製作されてから、随分あとになってこれらのパーツが付けられたのではないか、という推測が成り立ちます。

 トップ割れを止めていたクリートが、目と口(恐らくセルロイド)を貼っていた紙を剥がした跡(ボディ内部側)から出てきているので、何ケ所かのトップ割れの修理をした跡に、目と口を付けた事になります。また、トップ側の目と口の下には、天使等と同じ手法で模様が彫り込んでありました。トップ外周のセルロイド類の下にも何かの模様が彫り込んであります。オリジナルと思われる装飾にはセルロイドは使われていません。つまり、この楽器が作られた年代は、セルロイドが世に出てくる前である可能性も十分有ります。

 以上リペアマンからのレポートです。なるほど。随分古いギターである可能性が高くなってきましたね。後はゼロフレットの歴史とハープギターの歴史をオベンキョすれば、少しはこのギターのアイデンティティも明らかになりそうです。ただ、かなりメンド臭い探索になりそうですが(笑)。



 そんなわけで、一ヶ月ほど経ちました。そこで、TOP板修正の具合の確認と、今後の修理の方向性の打ち合わせの為に、工房にてミーティングを行いました。この時点でこのギターは、東京/日野にある「イイヌマギター」の工房にあり、そので入院しています。イイヌマ氏は米国にてギター制作の修行をされ、現在当地でアコースティックをメインにギター制作をされているプロのルシアーです。リングギターズ他でその楽器に触れることができるので、フラットトップ派の方はお試しあれ。クラシックギターの世界では既知の事実ですが、フラットトップやアーチトップの世界でも、日本人ルシアーの技術は 世界のトップレベルの一角を間違い無く占めています。

 話を戻します。写真にあるように、TOP板は目出たく(笑)真直ぐに戻りました。やったね。で、今後、無数にあるTOPとバックの割れ止めと補強、更に内部ブレイシングを総取り替え(ひえ〜)、そして前述しましたが、強度を増すためにパイプ他で補強、と、内部の改造を行う予定です。フタを閉める前に、できることは全部やってしまいます。ピエゾ・マイクの選定もしなきゃなあ・・・

 写真真ん中は、イイヌマ工房のネコさんです。人間でさえもビックリするこのギターですが(笑)、さすがにネコにとっても興味津々なんでしょうか??(笑)それともただ「ジャマだなあ」と御考えなのでしょうか? もうしばらくはそちらに御厄介になりますので、仲良くしてね(笑)。



 さて、今後のリペアに伴いパーツ類は全て外して作業したわけですが、ペグに関して厄介なことがでてきました。入手時には、いわゆるクラシックギター用の3連のペグが付いていたんですが、それはオリジナルのペグを外して(元の溝が、円形で見えますね。もしかしたら、ここも元は前頁の写真にあるような、ロマンティックギターなんかで使われるような木製のペグを使っていたのかも、と推察できます)、 溝を新たに彫ってはめたモノだと判りました(穴も開け直してあります)。

 動作に問題なければいいんですけど、現状のペグも、既に使い物になりません。更に、クラシック用のものを使用すると4、5、6弦側のペグは「羽根」の部分につっかえて、チューニング作業が辛いです。そこで、バンジョーキー(写真左下)を使おうか」というアイデアが出ました。それならペグ穴の真下でチューニングできるので、スペース的にも十分OK、ということです。

 まあ、その際にここの木部のルックスをどうするか、って問題も出てくるんですが、彫刻模様の溝を埋めて平らに、だと味気ない気もしますが、そこらへんは「実用」を踏まえて、ってことでしょうがないでしょうね。ってことでリペアマンに一任してあります。完成後に、ヒマを見て自分で彫刻模様入れてみようかなあ、なんて思い、先日100円ショップで彫刻刀セットを購入してみました(笑)。ただ、俺がやっても、一目で素人作業だと判るようなレベルなんで、実施するかどうかは微妙(笑)。


3 ■ 割れの接着と補修

 さて、また時間が経ちました。左の写真は、TOPの割れと細かい破損箇所の補修を行っているところです。単板スプルーストップの縦方向に入った割れには、裏から割れ止めをポツポツと貼ってあるのが、上の写真で判ると思います。これを、割れの個数だけ延々と繰り返すワケです。筆者的にはある程度軽くみていた作業だったんですが、リペアマンから「これこそ気の遠くなるような作業です」というお言葉をいただきました(笑)。

 ブリッジ付近には9本の弦の張力がすべてかかっていたわけですから、ブリッジパーツ付近にはやたらと割れが発生していたようです。真ん中の写真でそこらへんがおわかりいただけるかと。

 詳しい説明はきいてないんですが、一番下の写真を拝見するに、多分ブリッジの真下の部分を何らかの方法で補強する模様です。というのも、このギターは既に大手術を施しており、補強構造を追加することが決定してるため、アコースティックな鳴りを殺していく方向性を免れないので、「ピエゾ・ピックアップをインストールして、エレキ・ハープ・ギターに生まれ変わる」ことが前提の為、そうした補強は好ましい部類に入ります。おそらく通常の6弦部分にはFISHMANのピエゾ・ピックアップを、さらに共鳴弦部分用にコンタクトマイクをインストールすることになります。既に「かなり重いギター」なので、出力はパッシブで、プリアンプは外に、ということになると思います。まあその方が選択しも増えますんで、好都合ですよね。



 さて、話は脱線しますが、最近ジャンクで右の写真のギターを入手しました。上の方でもちょろっと似たようなギターの写真を紹介していますが、これは1900年頃に作られた、ヨーロッパ産のハープ・ギターです。こういった類は、ドイツやオーストリアでよく製造されていたのですが、オーストリアの民族音楽史に多大な影響を与えた「シュランメル兄弟」が使用していたことからシュランメルギターもしくはコントラギターと呼ばれます。ナイロン弦のギターで、共鳴弦は9本。ダブルネック仕様ですが、共鳴部分は弾きません。ラーソン兄弟等が仕様したギブソンのSTYLE-Uやマイケル・ヘッジスで有名なDYERのハープギターとは、構造が違っており、それぞれ独自の歴史を歩んで発展した楽器だと思われます。筆者のハープギターの修理が終わったら、別項として「ハープギター」の頁も作ろうかと考えています。



■7/26現在、ここまでです。今後も新しい進行状況と写真が上がり次第、更新していきたいと思います。
完成の暁には、ギターの全体写真を大きなサイズで載せようと思います。お楽しみに。




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